シャドー・ジェミニちょっとスネークが出てくる話です。
ちょっとだけちゅーしていますが、それだけです。
岩・男のキャラはみんな好きなので書いていて楽しいですが
まとめる力が無いので仕上がりが残念なのが無念です。
よろしければ追記よりどうぞ。
なんとなく、共用スペースに置いてある大きなテーブルの上に本を広げていると、天井にある配管チェック用の四角い切れ込みの蓋が開いた。そんなところから出てくるのは二人、多くても三人しか心当たりがない。
『あ、ジェミニ殿!』
その心当たり二人の内の一人が、朗らかに呼びかけてきた。本を閉じて顔をあげると、黒い装甲のところどころに白い綿ぼこりをつけたシャドーがにこにこ笑いながら立っている。
「あんまりそういう所に入らない方がいいですよ。」
ぱほぱほとほこりを払いだしたシャドーに少しだけ眉をひそめる。
『や、これは失敬!』
そんな私に気がついたのか、シャドーは口を開かずにそう謝ってきた。口を、開かずに?
『お前腹話術の練習中か?』
「…私の疑問を代弁してくれてありがとう。勝手に出てくるんじゃありません、ハウス!」
『だから!オレは犬じゃない!』
私とホログラムのやり取りをけらけら笑いながらシャドーは言った。
『いつ見ても面白いでござるな。』
『お前のこと喜ばせるためにやってんじゃない!』
「それには同意します。というかシャドー、口壊してしまったのですか?」
真一文字に結ばれた口はピクリとも動かないのに、しゃべったり笑ったりするのは少し不気味だ。それ以上に、口が開かないのではE缶とかが飲めなくて不便だろうと思う。
『悪戯の仕返しに口をくっ付けられてしまったのでござる。』
シャドー困ったように顔をしかめた。それは自業自得というものだけれど、シャドーを捕まえることができるなんてどこの誰だろうか。
「なんて、考えるまでもありませんね。あなたクイック先輩にいたずらしたのでしょう!?」
『よく分かったでござるな!』
驚いたようにシャドーは目を丸くした。ホログラムが呆れたようにため息をつく。
『お前最近イタズラなんてしてなかったから、てっきり卒業したのかと思ってた。』
まったくだと思ってうなずくと、シャドーはなぜか誇らしげに胸をはった。そして子供のように無邪気に笑う。
『拙者が悪戯を卒業することなんてないでござる。ちょっとメタル殿が怒るのが恐かったから最近ひかえてただけでござる。』
「じゃあ、なんですか?クイック先輩以外にもいたずらしてきたんですか?」
考え込むように目線を泳がせ、指を一つ二つと折っていく。しばらくして、五本折って折り返したところで肩をすくめた。
『多分七八人ぐらいでござるな。リアクションが面白かった方しか覚えていないでござるが。』
「そうですか。それだけやれば気もすんだでしょう?はやく口を拭いてきなさい。」
そううながすと、シャドーは一つうなずきなぜか扉と反対方向の私のようにやって来た。私が座っているとなりの席に腰を落ち着けると、じーっと私のことを見つめてくる。
「なんですか?」
こんなに間近でシャドーに見つめられることなんて初めてで、赤い目がなんだか恐い。黙りこくったままのシャドーに私はしびれを切らして、呼びかけるために口を開いた。
「しゃ、っ!?」
すると、恐ろしい速さと正確さであごの関節を両手で包むように押さえ込まれる。はずれるかも知れないと恐くなるほどの力で、口がだらしなく半開きのまま体がこわばってしまった。溢れてくる疑似唾液を嚥下するときの喉の上下ですら顎が外れそうで、にっちもさっちもいかない状況下でもシャドーが何をしたいのか分からない。
『お前!なにすんだ放せ!』
ホログラムがそう叫んだのとほぼ同時に、むにっとシャドーの閉じた口が私の半開きの口の中に入ってきた。
「シャドーいるか?メタルさんがって、わぁーっ!!」
スネークが入って来るなりとてつもなく大きな声で叫んだのが聞こえた。その品のない声で、固まっていた頭が急速に動き始める。
「な、なにをするのですか!」
シャドーを突き飛ばすと、綺麗な半月型に唇の両端を引き上げてにこりと笑った。シャドーのそんな笑顔に薄ら寒いものを感じる。
「この接着剤はつばじゃなきゃとれないのでござるよ。協力感謝するでござる。」
まだぬめついている唇をこれ見よがしに人差し指でなぞりながら、元来た天井裏に飛び上がった。スネークと二人取り残されて、言葉もなく呆然としているとひょいと天井裏からシャドーの頭がのぞいた。
「これも悪戯の一貫でござるよスネーク殿。」
最後に明るくスネークに笑いかけて、今度こそどこかえと行ってしまった。少し冷静に動き出した頭の中は、すぐに怒りで煮えくりかえり始める。なんで私がいきなりキスされなければならないのだ!なんでそれがスネークに対するいたずらになるのだ!ひとつ確実なのは、あのいたずら忍者小僧をとても喜ばせてことだろう。そう思うと、物笑いの種にされたようでいてもたってもいられないほどの怒りが体を駆け抜けた。
「だ、大丈夫か?ジェミ、いてぇ!痛い!」
心配そうに近づいてきたスネークのヘルメットのしっぽを思い切り引っ張った。
「来るなら来るで早く来なさい!間の悪い奴ですね!」
そんな理不尽な八つ当たりにも、スネークは悪かったと謝りながらじたばたともがいた。