忍者ブログ
二次創作をのせることを目的に、ブログ運営を練習中
Admin | Write
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


メタルの話し。ほのぼの。
マスクについての妄想・ねつ造含みます。
苦手な方はご注意を。

よろしければ追記よりどうぞ。


 



『お前は、笑えないのか?』

生まれたばかりの私に、博士が言った。

『この顔が、笑うということではないのですか?』

生まれたばかりの私は、博士に笑って見せる。

 

博士は少し黙って、二体目の製作図を机の端に寄せた。そして何やら新しい紙に製図をする。しばらく待てと言って、隣の作業室にはいっていった。

 

しばらくとは、どのくらいかと思いながら待つ。10分と23秒して博士が戻ってくる。手に、不思議な形の鉄板を持って。

『顔をかせ』

これの意味は頭部をもいで渡すことではない。学習済みだ、大丈夫。この場合は、どうすればいいのだろうか。曖昧というか、人間独特というか、ストレートな字面からは読み取れない意味に戸惑うことが多い。とりあえず、腰を屈めて顔を博士の作業しやすい位置に下げる。

『そういうことだ』

口の端を引き上げる博士に、ほっと胸を撫でおろした。博士は、私が悩んでいるのをちゃんとわかっている。それで待っていてくれる。そのことは私の感情プログラムをすごく落ち着かせた。かぽっ、と口にさっきの鉄板が当てられた。

『苦しくないか?』

はい、と答える声がくぐもる。少し違和感を感じるが、苦しくはない。かぱっと鉄板がはずされた。

『後でヘルメットにつくようにする』

うなずくと、頭をあげていいと言われる。曲げていた腰を伸ばした。元の位置に戻った頭の中に、少しの疑問が生まれる。

『なぜ、それをしなくてはいけないのでしょうか?』

良い質問だ、とまた口の端を引き上げる。鉄板を机に置いて、私に向き直って博士が言う。

『お前さんの感情と表情のプログラムはまだ、未発達のようだ。だから二つが上手く繋がっておらん。いつか、感情の発達と共に表情も豊かになるだろう。』

椅子に腰掛け、また私に視線を注ぐ。わずかに口の端をあげながら、またゆっくりとしゃべりだす。

『それまでは、できるはずのことが出来ないことにイライラするはずだ。だから、これを口に当てておけ。気休め程度にはなるだろうから。』

私はうなずいたが、なにかが胸につかえた気がした。博士は微笑んだまま、私を見つめている。質問があるなら言いなさいと、目が優しくうながしている。

『感情にふさわしい表情は、どうやったらつくれるでしょうか?』

言うと、博士は私の手をとった。シワの多い手が、グッと力をこめて私の手を握る。そして、静かにでもはっきり言ったのだ。

 

「つくらなくても、溢れてくると。」

目の前にいる七人の兄弟たちは、じっとしたまま動かない。その真剣さがおかしくて、愛しい。

「おしまいだ。」

そう言ってやると、みんなの緊張がとけたのがわかる。クラッシュが、ドリルをふりながらしゃべりだした。

「あれ、じゃあもう口あてしなくていいんじゃない?」

最初に、なんでメタルは口あてしてんの?と言ったクラッシュが首をひねった。フラッシュもうなずきながら言葉を付け加える。

「今は普通に笑えてると思うぞ?」

「だいぶ長いことしてたせいか、ないと気持ち悪い。」

ふーんとクラッシュが納得する。他の兄弟も納得したようだった。

 

ただ、バブルとエアーだけは内心で少しだけ笑っていた。メタルは笑えるようになってから、しばらく口あてをしていない時期があった。でも、すぐに口あてを着け直してしまったのだ。その時言ったメタルの言葉を、二人は覚えている。

『無いと不安だから、お守りだと思って着けておく。』

メタル自身も言ったことを覚えている。ただ、弱音をはいたみたいで長男として嫌だったから、もう二度言わないと心に誓った。そんな長男が可愛いと思って、二人は内緒で笑ったのだった。

拍手[1回]

PR
Comment form
Name
Title
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
  管理人のみ閲覧可能にする
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
心太
性別:
非公開
自己紹介:
はじめまして。二次創作ブログどころか、ブログ運営も初心者ですが、がんばってやっていこうと思います。なにか不都合等ありましたら、お手数ですが拍手よりお知らせください。
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ [PR]

Designed by