お久しぶりになった訳は違う記事で言い訳させてください…。申し訳ないです。
ぎりぎりセーフでハロウィンネタです。
全体的に2ボスが出ている光速風味のSSです。
苦手な方はご注意を。
よろしければ追記よりどうぞ。
コツコツと扉をたたく音がする。俺は用意していたアメやチョコを持ってイスから立ち上がった。その間も続くせわしないコツコツという音に、ハイハイと小さく口の中で返事をする。そして扉を開くと、いきなり腹の辺りをドリルでつつかれた。
「ぎゃあっ!?」
「うわっ!?」
苦手武器をいきなり突きつけられて、大きな声をあげてしまった俺に、突きつけたクラッシュも驚いたらしい。
「わぁ、大丈夫?」
ヒートが心配そうに、クラッシュの顔を見上げた。
「…フラッシュ、大丈夫?」
ウッドが困ったように笑いながら俺にたたずねてくれた。大丈夫だとうなずくと、ホッと胸をなでおろしたウッドの後ろからヒョイとクイックが出てきた。
「お前、気をつけろよな!」
「そうだよ!」
びしっと俺を指さしながら言うクイックに、ヒートが同調してうなずいた。そんなひどい扱いをうけている俺の腹をドリルの先でクラッシュがなでてくれる。
「平気か?」
「…あぁ。それより、これをもらいに来たんだろう?」
お菓子の袋の口を開けながら聞くと、ヒートが待ってと手のひらを向けてきた。
「Trick or Treatって言ってないよ!」
「どうせ渡すんだからいいじゃねぇか。」
「…だめだ。そういう、ルールだから。」
クラッシュが真面目な顔でそう言ってきた。俺は少し面倒くさかったが、そう言うのも楽しみにしているらしいので、付き合ってやることにする。
「分かったよ、どうぞ。」
「じゃあ、せーので…」
「Trick or Treat!!」
四人が元気よくそう叫んだ。
「じゃあトリートで…ってクイックはいらないだろう!?」
手にさげられているジャッコランタン型の容器に56個ずつお菓子を入れながらクイックに言うと、この中の最年長者は駄々をこねた。
「なんでだよっ!」
「お前来るなんて思ってなかったからだよ。ほら、もう無い。」
クラッシュが腰からさげている入れ物にお菓子を入れて、袋を逆さまにふってやった。ゴミも落ちてこない袋を見て、クイックはうーっと悲しげにうなった。
「お前、後で見てろよ!!」
そう言いながら歯がみするクイックの横で、ウッドがやんわりと微笑んだ。
「そういえば、メタルがみんなで談話室においでって言ってたよ。」
「俺もか?」
「うん。」
なにやら面倒ごとが起こりそうで、行きたくなかったが、メタルが呼んでいるとなると行かないわけにはいかなかった。
「ほら、フラッシュもきちんとおねだりできたらいい物あげるよ?」
オレンジ色と白のアメが渦を巻くキャンディーを俺の口元に押しつけながら、メタルは妖しく笑む。
「…別にいらないですけど?」
その申し出を一刀両断にすると、メタルはつまらなそうに舌打ちをした。
「のりが悪いなぁ、フラッシュは!じゃあなにかい?私がイタズラしてもいいっていうのかい?」
「Trick or Treat…。」
それは逆じゃないですかとか言うこともできず、なんだか嫌になってきてそう呟くと、満面のいい笑顔をメタルがつくった。
「はい、あーん。」
ぐりっと唇の辺りにキャンディーを押しつけてくるメタルから逃げるすべが思いつかない。それでもあーんとかメタルにしたくなくて固まっていると、いきなり膝がかくっとした。
「ほげぁっ!?」
変な声をあげて前のめりになった俺を片手で支えたメタルは、俺に膝かっくんした奴にたしなめる口調で言う。
「クイックにはさっきあげたじゃないか。」
「フラッシュはオレにお菓子くれなかったから、これはそれのイタズラだっ!」
自分の足で立って振り返ると、クイックの手にキャンディーが握られていた。
「だからこれはオレがもらう!」
そう叫ぶとクイックはどこかへ走り去ってしまった。