久しぶりに光速らしい光速かと思われます。
フラッシュがヘタレを脱却できてるようなできてないような
そんな話しです。
接触はほとんど無いです。
そこそこ長いです。
よろしければ追記よりどうぞ。
「なぁ、フラッシュ!なんか面白い本ないか?」
データ整理を終えて自室で雑誌を読んでいると、クイックが飛び込んできた。普段本なんか読まないのに、どういう風の吹き回しだろうか?
「俺が本読んじゃいけないのかよ!」
ぽかんとクイックを見ていたら、そう言ってはたかれた。
「いでっ!」
「さっさと本だせ!」
気の短いクイックは苛立たしげに足で床を鳴らし始める。たしたしたしという音に急かされて、たまに掃除をするついでに読むくらいの本の中から、クイックが楽しめそうなものを探した。というか、探すふりをした。本棚にあるのはカメラとかパソコンの活用書が主で、空いている場所には物が飾ってありもはや本棚ではなくただの棚になってしまっている。そんな中に、クイックが面白いと思う本などあるはずがない。
「ちょっと聞くけどよ、どんな内容の本が読みたいんだ。」
苦し紛れの時間稼ぎに、そんなことをクイックに聞いてみる。するとクイックは、どんな、と繰り返して黙ってしまった。探すふりを続けながらクイックをうかがうと、なにか難しい顔をしている。そして、意を決したようにとんでもないことを言った。
「エロ本貸せ!」
「はぁ!?」
持ってないとは言わないが、貸せるような内容のものは持っていない。
「もってんだろ?ベッドの下か?」
かがむようにベッドの下を覗き込むクイックに、俺はものすごい慌てた。ベッドの下には隠していないが、そんな場所によく隠してあるなんてことをクイックが知っているとは思えない。誰かに吹き込まれた情報ならそんなこと言うのは一人、メタルしか考えられない。そうなれば俺固有の隠し場所も、そっとクイックに教えている可能性が高い。
「な、何でそんなもん読みたがるんだよ!」
不自然にならないように気をつけながら、クイックをそれとなく隠し場所から遠ざける。
「お前いつも俺の好きそうな話題を持ってきてくれるから、お前がどんなものが好きかを調査するんだよ。」
大真面目にそう言うクイックには悪いが、大変迷惑である。
「俺の好きなことは写真とパソコンいじることだ!知ってんだろ?」
「…知ってるぞ。」
「じゃあ、何でいきなりエロ本になんだよ。」
きょろきょろとあたりを見回していたクイックが、はたと動きを止め俺を見て、すぐに視線をそらしながらつぶやいた。はきはきと言いたい事を言うクイックに珍しく、小さくもにょもにょとした声は俺に届かない。
「ん?なんだ?」
「最近してないなって、それで。」
どれで、と聞きたかったがクイックがまた口を開いたので我慢した。
「もしかしたら俺はお前の好みじゃないのかなって…。」
「で、なにか?最初から俺の、そういう好みを調べにきたと。」
こくんとうなずくクイックに、俺は自然と笑みがこぼれるの抑えられなかった。
「クイックもそんな心配するんだな…。」
強くて綺麗なクイックに不釣合いだと、いつも愛想をつかされることにおびえている俺は少し反省した。できるだけクイックを尊重しようと思って、求められなければ求めないようにしていたのがクイックには不安だったらしい。だからといって、俺から求めることはできそうにない。
「クイックは俺によく言うよな、無理すんなって。クイックも、無理すんなよ。」
「俺のこれは無理じゃない。」
少し強い語調で、俺をにらみながらクイックはそう返してきた。
「俺に合わせようと、無理してんだろ?」
俺がそう言うと、まったく間をおかずにクイックが言う。
「お前のためにすることで無理なことなんかない。」
予想していた趣旨の返答でも、クイックの言葉で言ってもらえると嬉しい。俺も精一杯自分の言葉で伝える。
「俺も同じだ。お前のためなら、俺のことは後でいいよ。」
クイックはぽかんとする。そしてなぜか、ボッと赤くなった。
「どうしたん、ぐえっ!?」
いきなり一歩でクイックが俺に突進してきて、床に盛大にしりもちをついてしまった。尻が痛いが、ぎゅうぎゅうとクイックが首を抱きしめてくるのも痛い。
「かっこつけてんじゃねぇよ、バカ!」
確かに俺はバカかもしれない。据え膳のクイックよりも、こんな風に憎まれ口をたたクイックの方がいいのだから。