宅のロックってどんな性格なんだろう?
と思って書いてみました。
性格をよく考えてない以前に
初登場でした…。主人公なのに。
ギャグです。CP要素は皆無です。
ロックが多少黒い気がします。
なんでも許せる方は追記よりどうぞ。
「あっクイックだ。」
聞き覚えのある明るい声にな前を呼ばれて、クイックはびくっと肩を震わせた。特売の札が立ったE缶のワゴンに伸ばした手を、思わず引っ込めてしまう。
「なんだよ。」
ロックのことが苦手なクイックは、憮然とした顔で返事をした。子供らしい服装に屈託のない笑顔のロックは、とことことクイックのそばにやって来る。
「あいさつしようと思って、やぁ。」
「おう。用が終わったんならどっかいけよ。」
にこにこ笑いながら買い物カゴを持ち直して、ロックはクイックに笑いかける。
「いいじゃない、お話ししようよ?」
「立ち話するほど暇じゃない。」
空の買い物カゴにぽいぽいE缶を放り込みながら、クイックはきっぱりとそう言った。その顔にはどこか余裕がなく、いち早くここから離れたいようである。そんなクイックの横顔を見て、ロックはさらに笑みを深くした。
「君もスーパーなんかに来るんだね?」
数を口の中で数えていたクイックは、少しにらむようにロックを見る。
「俺達だって、買い出しとかするんだよ!」
そう言ってカゴの中のE缶を数え直し、足りない分をワゴンからとって確認のためにまた数えだす。なにも言わずに見守りながら、数える数字が全体の半ばぐらいになったときロックはまた声をかけた。
「兄弟がたくさん増えたね。」
クイックは今度は途中でにらむことなく数えきる。
「人が真剣に数を数えてるときに話しかけんなよ!」
怒って叫ぶクイックの顔をロックは楽しそうにながめた。
「いやぁ、クイックってからかうと面白いんだもの。一番面白いのはメタルだけど、次ぐらいには面白いと思うよ!」
元気よくそんなことを言うロックに、クイックは何も言わずに背を向ける。大股に歩き去ろうとしたとき、ロックがクイックを呼び止めた。
「ねぇねぇ、この札ちゃんと見た?」
振り返って見ると、ロックが指さすワゴンにたった札には一本の値段が書いてある。他には、注目すべきことは書いてない。それがどうしたのかとにらむクイックに、ロックは微笑んで手招きした。
「あっちの棚で、六缶一セットのE缶が売ってたよ。値段は一本このワゴンの10%オフくらいだった。」
「な、なんでだよ!ちゃんとチラシをメタルがチェックしたんだぞ、そんな話し聞いてない!」
日に日に悪化する家計を預かるメタルが、より安い物を見落とすはずない。そう思ったクイックは、ロックの言ったことがにわかには信じられなかった。
「どうしてかは知らないけど、そうだったから一応教えてあげたんだよ。チラシのチェックだけじゃなくて、実際自分でお店を回らないと分からないことってあるからね。」
そう言い残して歩いて行こうとするロックを、今度はクイックが呼び止めた。
「お前はじゃあ、ちらしチェックをしないのか?」
ぴたっと止まって振り向いたロックの顔には、笑みがなかった。真剣なその顔は、戦闘時のロックマンを思い出させる。まとう空気の強さに、クイックは思わず息をのんだ。
「ぼくが歩いて一時間くらいの範囲にあるスーパー全部のチラシを見て、総合的に一番安かったここに来たんだ。」
「なっ!?」
そこまでするのかと、クイックは言葉を失ってしまった。そのクイックの驚きのまま固まっている顔に、ロックはまたふわりと笑いかける。
「メタルもきっと、同じことしてると思うけど。つめがちょっとあまいかな?」
戦闘においても買い物の計画においても穴のないと思われたメタルの、つめが甘いだなんて。失われた言葉は戻ってこず、クイックは改めてロックのすごさを目の当たりにして知らずに身震いしていた。
「あ、ぼくそろそろ行かなきゃ。じゃあね!」
そう言って今度こそ去っていったロックの背を、クイックはただ見送ることしかできなかった。馬鹿らしいことではあるが、負けるということが心底嫌いなクイックは人知れず地団駄ふんでくやしがった。