注意は1を参照でお願いします。
久しぶりの更新です。速の視点でお送りします。
光が出てきています。
よろしければ追記よりどうぞ。
いきなり目が覚めた。いつからスリープモードだったのか思い出せない。記憶回路が混乱して、何で自分が寝ていたのかも思い出せなかった。
「再起動したか?」
ぐるぐるする思考回路を必死になだめていると、いきなり誰かの顔がのぞき込んできた。青い装甲に黄色いヘルメットに鼻のない顔、どれにも見覚えがなかった。アイカメラを動かして周りを見ると、そこはいつもの見慣れたメンテ室だ。
「…お前だれだ。」
ワイリー基地にいるから敵ではないだろうと思いながらも、抜け落ちている記憶の中で何が起こったか分からないから、目の前の奴にそう聞いた。青いそいつは少し口の端を引き上げると、ゆっくりと口を動かした。
「俺の名前はフラッシュマン。クラッシュの次に作られた。初期動はもう少し後だったんだが、いきなり起こされた。」
よろしくとさしだされた手はとても大きかった。その手を握り返すと、ぐっと引っ張り起こされた。すこしくらっとしたけど、体を起こしても異常はない。じゃあ、なんで寝かされていたんだろう。
「大丈夫か?頭が爆発しそうな顔してるぞ?」
必死に何があったか思い出そうとフル回転している頭に、ポンと手を置かれた。いくら弟機とはいえ、会ったばかりなのになれなれしいその態度に少しイラッとする。頭にのせられたフラッシュの手を軽くはたき落とした。
「クラッシュがすごい泣いてた気がするんだけど、クラッシュどうしたんだ?」
強制終了する直前に見た、悲しそうなクラッシュの顔をふっと思い出した。その顔になんだか急に不安がこみ上げてきて、隣に立っているフラッシュにたずねた。フラッシュは不思議なもの見るような顔で俺のことを見る。しばらくそのまま見つめられるだけで、答えが返ってこないことにいらいらしてきた。このいらいらを察したのか、フラッシュは肩をすくめてみせる。
「クラッシュなら元気だ。メタルがぼこぼこにしたけど、たいした傷じゃなかった。」
「メタルがなんだって!?」
クラッシュが元気だと聞いて安心したのもつかの間、聴覚センサーがぶっ壊れたのではないかと思うほど信じられない言葉が頭に飛び込んできた。少しずつ鮮明になってくるスリープ前の記憶では、たしかにメタルとクラッシュは仲がよくなかった風だった。でも、いつも優しいメタルが気にくわないからって弟機のことを傷つけたなんて信じられない。
「なんでそんなこと…?」
最後まで言葉にできずにうつむいた。まだ思い出せていないことがあるのか、記憶回路が焼き切れそうなほど回転し出す。
「…大丈夫か?」
また頭に手をのせながら、今度は心配そうになでてきた。熱を持った頭にひんやりとした手の冷たさが心地よくて、しばらくされるがままになっていた。落ち着いてきた頭の中に、胸を突くような痛みの記憶が閃光のように駆け抜けた。
「…俺、クラッシュに穴あけられた?」
うつむいたままの視線の先にある胸は綺麗に装甲で覆われている。自分で聞いておいてあれだが、穴があいていたなんて全く思えない。顔を上げて、フラッシュがなんと答えるのか待った。フラッシュは俺の頭をなでるのをやめ、少し間をとってから口を開いた。
「そうだ。」
簡潔な一言に次の疑問が頭にふってくる。
「なんでだ?」
また肩をすくめて、首を軽く振った。
「いじめられたと思ったんだってよ、あんたがメタルに。」
「意味がわかんねぇよ!どういうことだよ!」
フラッシュに怒ってもしかたないと分かっていても、叫ばずにはいられなかった。なんだか分からないけど、ものすごく不安でしょうがない。フラッシュはそんな俺に気分を害した様子もなくつらつらと語り出した。
「俺もよく分からんが、メタルはあんまりクラッシュのことが好きじゃないみたいだな。クラッシュはそのことに結構まいってたみたいだ。あんまり容量も大きい分けじゃないから、ぷっつんしたじゃねぇかな?」
俺よりも後に生まれたのに、俺よりも兄弟のことに詳しいフラッシュのことをまばたきも忘れて見つめてしまった。その内容も、想像の範疇外というか、普段からは考えようもつかないことで、言葉もでてこない。
「大丈夫か?」
「…俺って、あんまりみんなのこと知らなかったのかな?」
なにもない床の上に視線を落として、呟くようにフラッシュにたずねてみた。少し間があって、フラッシュが少し笑う声が聞こえる。
「俺がいろいろ知っているのは調べたからで、そういう性分だからだ。知られたくないように隠してたことをあばいたせいか、メタルに目をつけられちまったしな。」
何が言いたいのだろうか、よく分からずにフラッシュを仰ぎ見ると視線がかち合って少し驚いた。そのまま視線をそらさずに、フラッシュは語り続ける。
「時間をかけて分かることがあんだろうな。俺はまだ起きたばっかりでそこら辺の機微はよく分からないが。だから、クイックが知らない気持ちを親しい奴が抱いていてもなんも不思議はない。」
力強い言葉に、揺るがない眼差し。俺はものすごく安堵した。
「そうかな…。」
「そうだ。なにも知らないからって、自分を責めるようなことはない。」
フラッシュのおかげで元気がでてきた。まずクラッシュに元気だと伝えに行ってやろうと思い、座っていた修理台から飛び降りた。すると、軽く胸が痛んで台に手をついてしまった。