ちょっとブレイクさせてください。
ちゅーはありませんが、接触がほんの少しだけあります。
短めです。
よろしければ追記よりどうぞ。
庭先をクイックと一緒に歩いていると、目の前を何かが横切り低木の茂みに突っ込んだ。
「ネコだ!」
クイックの目には何かがしっかりと見えたらしく、そう叫んでふっと消えた。一瞬後にはネコを抱きかかえてクイックが戻ってくる。クイックはやたら嬉しそうににこにこ笑い、ネコの頭をなでた。ネコは大人しくなでられている。
「ネコだぞ。」
俺にネコを抱かせようと、そっと手渡そうとしてきた。クイックに抱かれているときはごろごろと喉まで鳴らしていたのに、俺のことはうろんとした目で睨んでくる。抱くのをためらっていると、クイックはまたきちんとネコを腕に収めた。
「お前ネコ恐いのか?」
「別に恐くはないがな、こいつ俺のことを睨んでる。」
そうか?とネコと見つめ合いながら、クイックは首をひねった。うるっとした目でクイックのことを見上げるネコ。ネコをかぶるの実物をはじめて目の前で見た気がする。こいつ、なんだか気にくわない。
「かわいいぞ?」
「そうだな、抱かせてもらえるか?」
いいぞと、さっきと同じようにネコを俺によこす。触れようと伸ばした手に、ネコが鼻を近づけてきた。ふんふんとにおいをかいでいる。なんだ可愛いところあるじゃないかと、思った直後、いきなり指に噛みつかれた。
「おわっ!?」
噛みつかれた俺よりも、クイックの方が驚いたようでネコを手放した。したんと華麗に地面に着地したネコは、そのままどこかへ走り去る。
「大丈夫か?」
かまれた指を手ごと両手で包み、心配そうに眺めるクイック。あたふたするクイックがとても可愛いくて、写真に撮りたいと思ったがあいにくカメラを持っていない。じっとクイックの挙動を見ていると、いきなりネコにかまれた指をクイックが口にふくんだ。
「おわっ!?」
今度は俺が叫んでしまった。急いで腕を引っ込めようとしても、クイックの手はがんとして動かず、身動きがとれなくなる。
「なになさってやがんだよ!」
文句を言うともごもごとクイックが口を動かした。しゃべろうとしているが、言葉になっていない。
「口はなせよ!」
これ以上されると、まずい。昼間からスイッチが入りそうだ。ふっと、上目遣いにクイックが俺のことを見つめてくる。もうだめだ、理性が消えそうだ。
「別にうまくはないな?」
ぎりぎりいっぱいのところで踏ん張っていると、クイックがカパリと口を開いた。
「…ネコはうまそうだから俺のこと噛んだんじゃないと思うぞ?」
「そうなのか。」
クイックはふーんと言いながらくるりと辺りを見回す。
「ネコいなくなっちまったな。」
飼いたかったのに、と呟くクイックの横顔をうかがうと、本当に残念そうだった。だが、俺は内心ほっとする。あのネコとクイックを張り合うなんて馬鹿なことは思わないが、それでもなんだか嫌だったから、本当にほっとした。