会話が多いです。
何となく唐突な感じがします。
視点が入り乱れています。
よろしければ追記よりどうぞ。
「あのねぇ、コピーエレキを殴りたくなるような話しと蹴りたくなるような話しと燃やしたくなるような話し、どれがいい?」
昔話をしてくれるというバブルは、にこにこしながら物騒なことを言っている。どの話しも聞いてみたかったが、どの話しでもないものをたずねることにした。
「コピーエレキマンのことを抱きしめたくなるような話しあるか?」
眠たげなバブルの目が、少しだけ大きくなった。んーと低くうなった後、うんと一人でうなずいた。
「あるよ。それでいいの?」
今度は俺が一つうなずいた。バブルはザバリとプールから上がって、へりに腰をかけた。水につかったままのバブルの足を見ていると、俺もやりたくなったので脚をつけてみる。案外温かくて、気持ちよかった。
「ちゃんと拭くんだよ。ええと、コピーエレキを抱きしめ殺したい話しだっけ?」
真顔で聞いてくるから、思わずうんと言いそうになってあわてて首をふった。
「ちがう、抱きしめるまででいいんだよ!」
クスリとバブルが笑って、はいはいと呟いた。からかわれたのかもしれないと、ちょっとむっとする。そんな俺を見て、バブルは笑顔を深くした。そして、昔の話しを語り出す。
調整のために連れてこられたラボには、見たことのない赤いロボットが吊されていた。ほとんど完成しているのに、両脚だけがない。体を支えてくれているメタルに赤いロボットのことを聞くと、四番目の兄弟とのことだった。
「名前はね、もう決めてあるらしい。」
過度に弟煩悩なメタルは、新しい兄弟ができるのが嬉しいらしく、気持ち悪いくらいにこにこしていた。ボクのことを作業債の上に座らせて、一通り道具を用意すると博士のことを呼びに行く。他の仕事をしていなければすぐ来るけど、してれば長いこと待たされた。その日は丁度長く待たされる日だった。なにをするでもなく過ごすのは、水の中で慣れている。だからぼーっと、床に引かれているコードの出所を目で追ったりしていた。すると、ラボの扉が開いて、コピーエレキマンが入ってきた。その時はまだ、戦闘訓練でいびられたことがなかったから、どういう奴かは分からなかった。ちらっと、ボクに鋭い一瞥くれた。その目で、吊された赤いロボットを見る。なのに、驚くほど穏やかな目だった。本当に同じ目だろうかと疑うほど。そして、一瞬苦しそうに顔を歪めてラボの扉を閉めた。
「…いまいち抱きしめたくならないんだけど?」
突然黙ってしまったバブルにそう言うと、苦笑いしながら俺のことを見てくる。
「せっかちだねぇ、クイックは。ちょっと思い出してたんだよ。」
バブルは俺から視線を外して遠いところ見つめると、また語り出す。
「クイックはまだ起きたばかりだから、分からないかも知れないけど、ボクたちは嫌われ者なのさ。ボクもメタルも、それを肌で感じたことはないけど、コピーたちはそれを嫌ってほど突きつけられてきたんだ。前の闘いでね。」
バブルの言う嫌われるとは、どういうことだろう?慈しまれてここまできた俺には、よく分からない。
「僕らには兄弟がいるけど、コピーたちにはオリジナルがいた。オリジナルと違う自分に、悩むことが多かったってコピーカットに聞いた。」
「コピーたちだって、お互い兄弟じゃないか。」
バブルがうんと、相づちを打って続ける。
「兄弟だっていうことも、オリジナルたちの関係性がそうだからって、自分たちもそうあることはないってね、コピーたちは自分たちのことを絶対に兄弟とは言わないんだよ。」
そう言って口をつぐんだバブルは、まだ遠いところ見たままだ。俺はなんだかコピー達を、悲しい奴らだと思った。よりどころがない、悲しい奴らだと思った。
「今になって思えば、コピーエレキはクイックのことを、クイックが生まれる前から気にかけていたんだね。」
色々なことを考えている所に、思いがけないバブルの言葉がふってきて驚いた。さんざん俺のことをけちょんけちょんにしてくれたのに、コピーエレキマンが何で?
「な、なんで俺のことなんか気にかけるんだよ?」
しどろもどろで言う俺に、バブルはにこっと微笑んできた。ちゃぷんと水を蹴り上げて、古めかしい言葉でしゃべった。
「敵を知り己を知らば百戦危うからず、だよ。」
意味がよく分からない。首をひねっていると、バブルが付け加えるように言った。
「これ、コピーエレキのお説教ラインナップの一つだよ。敵のことを、当面はまぁ、コピーエレキのことをしっかり分析してごらん。そんでもって、自分の能力のいい使い方を考えてみるといいよ。」
頭がぐるぐるする。一気に言われて、ちょっと思考が追いつかない。とりあえず、後でコピーエレキのことを調べてみようと思う。考えをまとめている俺に、バブルが聞いてきた。
「コピーエレキに負けたのまだ悔しい?」
「決まってるだろ!悔しいよ!」
そうと、言ってバブルが目を細めた。じゃあ、とゆっくりした口調で提案してくる。
「じゃあ、今、宣戦布告しておきなよ。」
自分から言うのがなんか恥ずかしかったから、バブルに頼んで明日も戦う約束を取り付けた。