中編です。内容は前編の注意書き参照です。
なんでも許せる方向けです。
中身に関係ない言い訳付きです。
よろしければ追記よりどうぞ。
新居を構えて、二人で暮らし始めた。綺麗なクイックが待っていると思えば、つらい仕事の後でも歩調は軽かった。
「ただいま。」
家に帰りついて玄関に入ると、奥でドタドタと物音がした。不審者かも知れないと、手近にあったゴルフクラブを握って物音を追った。その先には、大きなクローゼットがある。
「どうしたんだ?」
後ろからひょこっとクイックが現れた。
「危ないから下がってろ!」
そう言ってクイックをその場に押しとどめ、クローゼットの取っ手に手をかける。勢いよく開くと、そこには見知らぬ男が隠れていた。気の弱そうな男の服ははだけていて、胸が所々紅くなっている。
「す、すみませんでした!」
言うやいなやその男はすごい速さで俺の脇をすり抜けて、玄関へと走っていった。
「あ、マグネット!ベルト忘れてる!」
ベルトを片手にクイックが男の後を追って行った。呆然としていると俺のもとにクイックが戻ってきた。
「お前浮気してたのか?」
「ん、いけないのか?」
その返事に、体から力が抜けていくのがわかった。
それから毎日、帰る度にクローゼットに見知らぬ男が入っている。ついに我慢できなくなった俺は、クイックに理由を問いただしてみた。
「俺、愛と美の女神ヴィーナスの息子なんだ。」
「はぁ!?」
ヴィーナスの息子ってエロスって名前だろ?手が速いからクイックって名前なのか?混乱中の俺をしり目に、クイックは話を続けた。
「俺のこと慕って来てくれるやつらのこと、無下に追い返すことはできない。離婚するか?」
さらりとそんなこと言うクイックの翠の目は、怖いくらい本気だった。
「そんなことは、できない…」
クイックを慕う見知らぬ男共と同じで、俺もクイックの虜なのだ。クイックが俺のことを、その他大勢と同じように好きでもかまわない。でも俺は、自分がクイックの特別な存在でないことに我慢できない。だから、書面上のむなしい地位でも、旦那という座を手放すことはできなかった。
それからもクローゼットの中には見知らぬ男が毎日入っていた。よくよく観察すれば、総じて色男だ。並みよりやや下辺りの俺よりも顔かたちがいいのは当然で、系統は違えどテレビや雑誌に出ててもおかしくないレベルの美形ばかりなのだ。クローゼットに隠れるなんてあほじゃね?と思えるくらいに心の余裕を取り戻していたが、その事実に気づいて顔から血の気が引いてく音がする。俺、いつ捨てられてもおかしくないのかもしれないと、不安が首をもたげた。その不安がある日、現実のものになる。
ヴィーナスはローマ神話の神様です。エ.ロスはギリシア神話の神様で、アフロディティの子供です。
アフロディティはヴィーナスと後の世同一視されました。ヴィーナスの子供はキューピッドですが、
エ.ロスと同一視されていました。原作に中途半端に沿ったのでねじれてしまっています。でも、クイック
がエロスっていうのが譲れなかったんです。すみません。