「お前、ばかだなぁ…。」

修理台の上に横たわり、排気すらしない青い機体に話しかける。腕がもげて脚がひしゃげて、顔の半分が見る影もないくらい熱で溶けていて直視することがつらい。煤けただけで無傷の右手にそっとふれた。反応はない。当たり前だ、電源を落としているのだから。運び込まれてきたときは体中が痛かったらしく、この手で口を覆って、声を押し殺しながら耐えていた。

「お前、ばかだなぁ…。」

ふれた右手を、ぎゅっと握る。元々戦うことに不向きなくせに、大破させられるまで食い下がるなんて。もっと早く、武器データなんて手放してしまえばよかったのに。そうしなかったのは俺のためと分かっている。こいつが精一杯、俺のことを守ろうと戦っていたのは分かっている。それでも、言わずにはいられなかった。

「お前ばかだなぁ…。俺はお前より強いんだぞ。」

こいつがいつか俺のために、無茶をしでかす日が来るのではないかと思っていた。取り返しがつかないくらい、壊れてしまう日が来るのではないかと思っていた。だからこそ、言わずにはいられなかった。

「お前がいなくなったら、俺がいる意味なんて無いじゃないか…。」

痛々しい機体を瞬きせずに見つめていたせいで、洗浄液が目から溢れてきて、ぽつぽつとフラッシュの手に斑点ができた。

[4回]