色々出てきます。
光速要素ありです。苦手な方はご注意を。
あと、長めです。
よろしければ追記よりどうぞ。
結局ジェミニに押しとどめられてしまったフラッシュは不機嫌そうに深く腰かけなおした。
フラッシュはどうもここ数日クイックに隠し事をされている気がしている、最初はこのエイプリルフールのジョーの結婚式の事だと思っていたがどうやら違うらしい。
尋ねようかとも思ったがクイックがあまりに上機嫌だったので聞き損ねている
思わずフラッシュはため息を漏らした。
自分はクイックと付き合っている筈である
しかしクイックが頼るのはいつも友人のターボやジェミニ。
自分では無い。
クイックは付き合う事を実の所理解しているのか?自分はクイックにとってよく喧嘩する弟の域から出てさえいないのじゃないか?
フラッシュがそんな暗い考えに沈み始めた時、彼の心境に同調する様に会場が暗くなった。
『長らくお待たせしました。二度目の新婦入場ですがより一層大きい拍手でお迎え下さい。』
メタルの司会に新郎が抜けているとフラッシュが気付くより早く、扉にスポットライトが当たった。
普段のフラッシュなら気付いたかも知れない。
新郎新婦の席、そしてその前に位置する仲人席から入り口までの直線に他にテーブルが無い事を。
フラッシュの席は入ってくる花嫁を見るにはアリーナ席である事を。
『新婦DWN012クイックマンの入場です。』
拍手の音が会場に響く
やんややんやとはやしたてる声がそこかしこから上がった
しかしフラッシュは耳からの情報を全く理解できなかった。否、する必要がなかった。
何故ならいつの間にか開けられた扉をくぐりクイックが光の中に立っていたから
いつもの胸の装甲はドレスに変わっている。
黒いスーツはそのままに左右非対称のドレスは左側が極端に短く、すらりとした足が赤いピンヒールブーツに太ももまで覆われて伸びている。
頭に赤い花飾り、機体飾りには緩く黒いリボンが巻かれて、ベールも黒で一般的な花嫁では考えられない色使いだ。
両側を七五三の様な格好のジョーに挟まれてなお絵面は柔らかいもの等ではない、もとより整った顔は華美な装飾に凄みをまして美しく
戦うために作られた彼の体は
足は換装され速さを失い、手には武器が握られていないにも関わらず、凛としたその佇まいから刃物の様に冴えざえとした雰囲気を纏っていた。
しかしその程度では圧倒されないのが三博士のロボット達である。
「はは!かっこいーぞクイック!!」「黒い…」「何で黒だ…」
皆思い思いの感想を口にする
「グイ…ッグぜんぱい、何て美じい…!戦乙女、う"ぁルキュリーの様に神々じいですっ…!!」
「うおお!?何で本泣きなんでござるかジェミニ殿!!」
しかしそんな中フラッシュはポカンと口を開けてクイックを見つめて動かない。
クイックが赤いカーペットをピンヒールで踏みつけながら進んでくる。
「おい。」
たん、と目の前でクイックが手をフラッシュのテーブルについた。
「どうだよフラッシュ?この格好。」
皆がフラッシュの様子を見守る。
「かっ…!」
暫くの沈黙の後、フラッシュがようやく何やら口をきいた。
「ん?」
「可愛い…。」
綺麗はならともかく可愛という反応には一同首をかしげざるを得なかったが、それでもクイックは満足そうに頷いた。
「そうか。」
「じゃあ御召しかえですね新郎さん!!」
「おぅわあ!!」
フラッシュは突然三ボス勢に取り囲まれる。
三ボスはフラッシュの肩等の装甲を手早く取り外して行く。
「バスターどうします?」
「とっちまえ」
「外れませんよ」
「じゃあ腕ごとでいんじゃね」
「待て待て待てお前ら何しやがる!!」
フラッシュが悲鳴を上げる。
「何ってクイック先輩がドレスであなたがそれじゃ釣り合わないでしょう、まあ何着ても釣り合わないでしょうが。」
「てめえ、ジェミニ!俺になんか恨みが有んのか!」
「いえいえ、クイック先輩にふさわしいのかこのハゲが…とか疑問になんて思ってませんよ!」
「いい度胸だお前ら!!絶対後で…!」
「スパーク。」
「了解。」
「ぎゃああぁあ!!」
「で、何故クイックがドレスで俺が紋付き袴だ。」
「足換えなくていいし、着物はサイズがかなり応用きくって誰か言ってた。お前のサイズ計る訳にいかなかったしな。」
新郎新婦席に移動させられまだ文句を言い続けるフラッシュの鼻(無いのであくまで辺り、だが)を押しながらクイックが言う。
「何やってんだ。」
「やっぱ俺鼻無い顔好きだ。」
一瞬コンプレックスにしている事を逆に誉められて気恥ずかしくなったフラッシュだが、確かにジェミニをはじめクイックの交友圏に鼻無しは多い。
「…顔だけか、好きなの。」
フラッシュが若干気落ちしたのを悟ったのかクイックは口角を上げた。
「どうだろうな、とりあえずハッピーエイプリルフール。フラッシュ」
「あ、式まだなのに口付けした。」
「そう?速すぎて僕には見えなかったけど。」
「いや、した。」
何故か言い切る自分と同型のアイカメラしか積んでいない兄を見ながらバブルは弾き終わったそろばんで肩を叩く。
「次は挙式か…。」
まだまだ続く四月馬鹿。